2017年11月号
再会した仏像
―「島根の仏像」展―
浜田市生湯町に所在する多陀寺には、平安時代に作られたとみられる59躯もの天部立像が伝わっています。そのうち保存状態が良好な27躯が島根県指定文化財となっており、さらにそのうちの2躯が古代出雲歴史博物館に寄託されています。
天部とは、インド古来の神が仏教に取り入れられ、護法神となったものの総称です。様々な種類がありますが、多陀寺の諸像の場合は天部の中でも特に毘沙門天である可能性が高いです。当時、毘沙門天には、境界を守り、侵入しようとする邪気を除くことなどが願われました。多陀寺は石見国府や日本海を見渡せる山上にありますので、多陀寺の仏像へは、国境において石見国を守ることが期待されたのかもしれません。たくさんの数の像が作られたことは、期待の大きさの現れなのでしょう。
さて、博物館寄託の2躯はこれまでにも展覧会で度々紹介してきましたが、他の像は詳しく紹介されたことがありませんでした。
そこで、本展開催に先立ち、全59躯の調査を古代出雲歴史博物館と浜田市教育委員会で改めて実施しました。その成果をもとに、展覧会図録では初めて本格的に全躯を紹介することができました。また展示では、お寺に安置されている像のうち保存状態が良く特徴的な姿をした8躯を選び、博物館寄託の2躯とあわせて10躯を展示しています。
お寺に安置されている像と博物館寄託の像とは、このたび展覧会場で久々の再会を果たしています。どんな言葉を交わしているのでしょうか。想像してみるのも楽しいかもしれません。
(古代出雲歴史博物館 濱田恒志)