山陰のコンサート・演劇・映画・ギャラリー・イベント情報満載!

CatchNavi

しまね連れづれ草

 

2018年3月号

企画展「隠岐の黒曜石」

    皆様、「黒曜石」という石をご存じでしょうか。歴史や地学の授業で学ばれた方もおられるかもしれませんが、私たちの生活の中では、目に触れる機会はそれほど多くないかと思います。そんな黒曜石ですが、文字のない太古の歴史を知るのに、大変重要な役割を果たしました。そこで今回、古代出雲歴史博物館の企画展では、隠岐で採れる黒曜石をテーマにした、ちょっとマニアックな展覧会を開催します。

    黒曜石とは、火山の噴火によって生まれた天然のガラスです。表面は黒く、陽に透かすと鮮やかな輝きを放ちます。ガラスなので非常に鋭く割れ、細かく加工することも可能でした。こうした特徴を活かして、狩猟採集を生業とした先史時代には、黒曜石は狩猟や加工の道具として利用されました。

    隠岐の黒曜石の歴史は古く、最古の資料は約34,000 年前の中国山地の遺跡から見つかっています。この頃は、アフリカ大陸から移動してきたヒトが日本列島に到達・定着した時期に相当します。日本に来たばかりの人類は、すぐに隠岐まで到達し、黒曜石を利用し始めたようです。これ以降、隠岐の黒曜石は、縄文時代、弥生時代とおよそ3 万年以上にわたって、使われ続けました。その長い歴史の中で、その利用が途切れたことは一度たりともありません。それほど、彼らにとって黒曜石の存在は重要なものだったのです。

    今回の展示では、隠岐の黒曜石を使った石器が、3万年の時を越えて一堂に集合します。旧石器時代、縄文時代、弥生時代と三つの時代を通して連綿と使われ続けた隠岐の黒曜石。そこには一体どのような魅力が秘められていたのでしょうか。ぜひご来館いただき、黒曜石の歴史のダイナミズムに触れていただきたいと思います。

(古代出雲歴史博物館 稲田陽介)