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Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2018年4月号

第90回 米アカデミー賞から

     監督やプロデューサーのセクハラ問題に揺れ、どうなるだろうと思われた第90 回米アカデミー賞授賞式。90回という記念セレモニーに漂う暗雲は様々な形で報道され本筋よりそちらの方に興味を注がれたりしたが、とりあえず式は無事に終わったようだ。

    作品賞、監督賞も含め4部門を制したのは人間と謎の生物の恋を描いた「シェイプ・オブ・ウォーター」。差別との決別や多様性の重要さを訴えた優しい映画という。近年は作品賞を獲得したものの興行的な理由などで地方公開がなされないことが多いが、その年の作品賞くらいは劇場で観たい。

    明るい話題は京都市出身の肖像彫刻家、辻一弘氏(48歳)の受賞。辻さんは「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」でメーキャップ&ヘアスタイリング賞を三度目のノミネートで受賞した。

    辻氏は十代から独学で特殊メイクアップを学び現在は現代美術家として活躍中。その作品を知った主演のゲイリー・オールドマン氏からの直々の依頼でメーキャップ・アーティストとして撮影に参加、日本人初の賞を掴んだ。

    日本人らしい細やかな仕事ぶりはハリウッドの映画人たちを驚かせ、チャーチル役を演じたオールドマン氏も初の主演男優賞に。「皺ひとつでその人の人生が描ける」が辻氏のメッセージ。情報通によれば作品賞「シェイプ―」にも辻さんの協力があったらしい。

    ここで主演男優賞のオールドマン氏のことを。出演作に「レオン」(1994年)などがあるが、当時から役により面相まで変えてしまう「カメレオン俳優」といわれ強烈な個性が売り物だった。

    そのオールドマン氏が業界から注目されたのが「レオン」の前に撮ったフランシス・F:コッポラ監督の「ドラキュラ」(1992年)。怪奇小説の古典「吸血鬼ドラキュラ」を現代に蘇らせた大作で、主演のドラキュラ伯爵を大メーキャップで演じたのがオールドマン氏だった。

    作品は衣装をデザインした石岡瑛子さんがアカデミー衣装デザイン賞、同時にメーキャップ賞も獲得している。

    偶然といえばそれまでだが、オールドマン氏の出演作品には日本人スタッフとの“縁”が見え隠れするところが面白い。

(むー。)