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しまね連れづれ草

 

2017年10月号

島根の仏像
―平安時代のほとけ・人・祈り―

    古代出雲歴史博物館の秋の特別展、テーマは「仏像」です。

    「神々の国」という言葉で紹介されることが多い島根ですが、実は、優れた仏像が数多く伝わっている土地でもあります。この展覧会では、特に個性的な仏像が多く造られた平安時代に着目し、島根の仏像の魅力を改めてご紹介します。また、「人」が「ほとけ」に「祈り」を捧げる、その営みの中で「仏像」が持っていた意味にも迫りたいと考えています。

    展示の主な見どころは次の3つです。まず、島根の代表的な平安仏が歴博に集合すること。島根の仏像の文化財的価値は早くも明治・大正時代から注目され、これまでにたくさんの平安時代の仏像が国の重要文化財に指定されています。本展ではその半数以上をご紹介する予定です。特に、平安時代前期の代表的な薬師如来像、出雲市・萬福寺 (大寺薬師)と松江市・佛谷寺(ぶっこくじ)のふたつの像が一堂に会するのは滅多にない機会でしょう。薬師如来は、当時特に信仰された「ほとけ」でした。

    次に、限られた機会にしか拝観できない「秘仏」を特別に公開すること。「秘仏」とは、信仰上の理由などにより普段は拝観が許されない仏像のことです。1年や数年に1度、公開される場合もありますが、その機会は多いとはいえません。今回、所蔵者のご厚意により、そうした「秘仏」の出陳も叶う予定です。

    そして最後に、展覧会のための事前調査などにより近年新たに平安時代の作だとわかった仏像を寺外初公開すること。なかでも注目は、出雲市・高野寺の聖観音菩薩立像(しょうかんのんぼさつりゅうぞう)です。造形の様式と寺院の歴史を照合すると平安時代初期、9世紀前半の作と考えられ、現在確認されている中では出雲地方最古級の木彫仏像とみられます。

    島根の仏像は、まだまだご紹介できないくらい色々な魅力、個性、意味、そして謎を持っています。今回の展覧会でそれらを感じて頂けたら幸いです。

(古代出雲歴史博物館 濱田恒志)