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しまね連れづれ草

 

2017年7月号

世界を旅した銀貨
世界遺産登録10周年記念
特別展「石見銀山展 ―銀が世界を変えた―」へのお誘い

    みなさんは平成29 年が何の年かご存じでしょうか。今年は石見銀山が「石見銀山遺跡とその文化的景観」の名称で、世界遺産に登録されてから10 年の節目の年を迎えます。それを記念して石見銀山の魅力や歴史的価値を紹介する展覧会を古代出雲歴史博物館(出雲市)と石見銀山資料館(大田市)の2館で同時開催します。
    古代出雲歴史博物館では「銀でつながる世界」をテーマに、石見銀山の膨大な銀により、大航海時代に世界の経済や文化のグローバル化がもたらされたこと、国内では空前の経済発展と絢爛豪華な桃山文化が花開いたことについてご紹介します。日本初公開となる南米ボリビアの銀製品や、大航海時代の国内外の作品、石見銀山ゆかりの品々を通して、石見銀山の魅力と歴史的価値に迫ります。

    石見銀山資料館では「世界とつながる日本」をテーマに、石見銀山の発見を契機に、国内の鉱山の開発ラッシュが起こったこと、銀がもたらした海外の文物により、新たな技術や学問、文化が生み出されていったことについて展示します。異国情緒あふれる舶来品や江戸のモノづくりを象徴する作品を通して、石見銀山の歴史的な役割について紹介します。

    さてここで、たくさんの展示品のなかから、1枚の銀貨を紹介したいと思います。の銀貨は1776 年に南米のリマで鋳造されたスペインの8レアル銀貨です。表面をよく見ると様々な刻印が打たれています。この刻印は中国の商人が、支払いの際に銀貨の品質を保証するために打ったものです。さらにこの銀貨は文政5 年(1822)に長崎で1人の武士の手にわたったことが銀貨の包紙から分かります。つまり、この銀貨はボリビアのポトシ銀山の銀を原料に、リマで鋳造され、太平洋を横断し、フィリピンを経由して中国で使用された後、日本へやってきた、まさに世界を旅した銀貨だと言えるでしょう。この世界を旅したロマンあふれる銀貨に会いに来ませんか。

    そして、2館の展示をご観覧いただき、あらためて現地で世界遺産「石見銀山」の歴史や文化、その魅力を体感していただければと思います。 

(古代出雲歴史博物館 矢野健太郎)