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しまね連れづれ草

 

2017年1月号

めでたい!

    あけましておめでとうございます。本年も「しまね連れづれ草」をよろしくお願いいたします。
    おめでたい、ということで初夢のお話を。初夢に見て縁起が良いとされる内容としてよく知られているのが、一富士、二鷹、三茄子です。このことは江戸時代中期頃には言われるようになったようで、その由来には駿河国の名物説など様々あります。語呂でいえば、富士は「無事」や「不死」に、鷹は「高」や「貴」に、茄子は「成す」に通じることからめでたいとされるようです。

    ところで一富士、二鷹、三茄子には続きがあるのをご存じでしょうか。例えば、江戸時代後期の国語事典『俚諺集覧』(りげんしゅうらん)を見ると、四扇、五多波姑…と続いています。扇は末広がり、タバコの煙は上に上がることから運気が上がってめでたい、とされるようです。写真は明治28 年(1895)頃の引札です。引札とは商店が商品の売り出しなどを宣伝するためのチラシです。正月に向けて、農事などにとって重要な暦とともに配られることが多いことから、新年にふさわしいめでたい絵柄が多く用いられます。この引札は初夢を意識してか、富士山、鷹、茄子、扇が描かれています。ちなみにこの引札の発行元は、煙草製造所です。偶然かもしれませんが、一富士から五多波姑までそろった非常にめでたい引札なのです。

    古代出雲歴史博物館では、1月29日(日)まで、常設展期間限定展示「めでたい!」を開催中です。この展示では当館の収蔵品を中心に、ここで紹介した色鮮やかな引札や宝船・七福神など誰が見ても「めでたい!」と感じられるものから、歳徳宮・吉兆幡など正月行事にちなんだもの、嫁入り支度や孫拵えとして調えられた筒描藍染製品、仏教において吉祥的な意味を持つ意外なものまで幅広く紹介しています。およそ6割の資料が当館初公開ですので、これまで何度か来られた方も、また初めての方も楽しめる内容となっています。是非、ご観覧ください。

(古代出雲歴史博物館 品川知彦)