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Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2017年9月号

メドゥーサ号でボン・ボヤージュ

   夏休み真最中の我が家にとって、毎日の過ごし方は重要案件(笑)。そんな時、味方になってくれるのは、やっぱり映画です。下の子のリクエストにより観る作品が中心となりますと、やはり通常の鑑賞作品ラインから外れてしまうのは当然のこと。ただやはり、だからといって、このままではいられなくなった私は(笑)自分が観たい作品でありつつ、これなら上の子と観に行けるぞ! ! な1本を発見。思春期をむかえた息子を誘い、久しぶりに二人で映画館へと行きました。結果、単館系の劇場で、こんなにも声を出して笑ったことがあったかしらと思うほどお互いに大満足。いつまで付き合ってくれるか分かりませんが、夏休みのちょっといい時間になりました。

    その我が家イチオシ夏映画は『ボン・ボヤージュ〜家族旅行は大暴走〜』。抱腹絶倒、90分のノンストップ・パニック・カーアクション・ムーヴィーです。

    今日からバカンス。避暑地へと向かうコックス家の人々は、最新鋭のコンピューターシステムを搭載した自慢の新車「メドゥーサ」号に乗りハイウェイを快調に進んでいる。けれど高度なはずのシステムがショート。愛車は走行速度160 キロで暴走し続ける“鉄の凶器”と化したのだ。美容外科医のトム、精神科医で妊娠中の妻ジュリアと二人の子ども達。老いてなお恋多きトムの父ベンと、下心からベンが誘った見知らぬヒッピー娘の6人を乗せた“密室”は極限状態に。そんな中、夫婦それぞれの裏切りも判明し修羅場ともなる車内。その先には大渋滞という行き止まりが近づく。はたして彼らの運命は…。

    この作品の凄さは何と言っても脚本。観客が忘れかけていた伏線の回収まで完璧に行われていて、そう来ましたか! ! と清々しい気持ちになれること間違いなしです。フランス映画的難解さはカケラも無く、知的なユーモアと憎めない
お色気がチャーミング。中でもベンおじいちゃんの存在感は絶大で、孫たちよりも子どもっぽく、極限の状況を悪化させる張本人でもあるのに、一緒に旅してみたくなる得なキャラ。演じているアンドレ・デュソリエは、トリュフォー
やロメール、ジュネ作品への出演歴を誇る名優と分かり納得がいきました。そしてトムを演じる役者さん(ジョセ・ガルシア)は、どこかで見た顔では?えっロバート・ダウニー・Jr. ! ?いえいえ、この作品『アイアンマン』などアメコミへのオマージュが満載なのでした。

    便利で快適なはずが、気づかぬうちにAIに支配されている私達の日常に警笛を鳴らしつつ、様々な映画への愛を乗せて走るメドゥーサは最悪で最高な1台でした。買いたくはないですけれどね。

    

(Sai)