授賞式ではプレゼンターが作品賞のタイトルを読み違えるという前代未聞のハプニングがあった。当の作品は13部門で史上最多タイの14ノミネートされたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。結果は監督、主演女優、撮影、作曲賞など計6部門を制したが中でも注目されたのが史上最年少の32歳で監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル氏だった。
その「ラ・ラ―」とは―。自身は久しぶりに夢の映画に心を躍らせた。32歳の監督は映画が死ぬほど好きなのだろう。開巻のシネマスコープのロゴタイプ、「オズの魔法使い」のテクニカラーを思わせる色彩!そこには「ウエストサイド物語」「雨に唄えば」「巴里のアメリカ人」がある。「理由なき反抗」のジェームズ・ディーンの匂いがする。フランス産のミュージカル「シェルブールの雨傘」まで準備された名作のエッセンスで画面がいっぱいになる…。
チャゼル監督が「ラ・ラ―」で描きたかったのは「スクリーンの夢」だったのだろう。団塊の世代ならきっと涙する「ラ・ラ―」。アカデミー賞には幸、不幸がついて回るとされるが、若き天才監督にとって今年は不幸な年回りだったに違いない。映画ファンとして「ラ・ラ―」が作品賞を獲る時代をもう一度と願う。
(むー。)