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CatchNavi

Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2016年8月号

れい子の部屋

    少し前のことにはなりますが、「CATCH」6月号で予告していた通り『ルーム』を観て参りましたよ。でもね、正直に言いますと前回の原稿を書き終えた時点では時間が合えば行こうかな、と思っていた程度。でもそれが、ある方の一言で一転。絶対に観に行かなくてはならない1本だと確信し劇場へ向かったのでありました。その結果モーレツに感動。見事、2016 年上半期マイベスト映画に上り詰めたのでした〜 ! !

    今回のキーパーソン。それは、しまね映画祭でもお馴染み、映画評論家の北川れい子先生。「CATCH」にもご縁の深いある女性の結婚式に出席したところ、お会いすることが出来ました。そこにはナント、むーさん、錦織良成監督もご列席。このメンバーですから、映画談議に花が咲いたのは言うまでもありません。

    北川先生に最新映画情報やご意見を聞きたくてたまらない私は『さざなみ』『リリーのすべて』を観たことをお伝えすると、贅沢にもしばし意見交換。すると北川先生から「あなた『ルーム』観た?」と、かなり前のめりに聞かれたのです。熱く語って下さる先生のパワーに、私は鑑賞の優先順位を間違えたな(笑)と直感したのでありました。

    2015 年トロント国際映画祭で最高賞を受賞した『ルーム』は、アカデミー賞でも主要4部門にノミネートされ、見事ブリー・ラーソンが主演女優賞に輝いた注目作品です。

    小さな「部屋」に閉じ込められてから7年が過ぎた時、ブリー・ラーソン演じるママは奪われてしまった人生を取り戻し、5才の息子ジャックに外の世界を見せるため逃げ出すことを決意するのでした。ママとの約束と愛だけを胸に飛び出した彼の目に映る「世界」とはいったい…。

   この作品の本質が、「部屋」から出た後の物語の中にあったとは! ! というのが鑑賞直後の素直な気持ちでした。「部屋」から出られて良かったね、なんていう甘い映画では決してないのです。空白の7 年が本当は決して空白ではなく、ママとジャック、ママの家族が互いの変化に直面し受け入れてゆく姿を繊細に描き出したナリオは実に巧み。もう一度観たくなるほど引きつけられる作品でした。

   プロ中のプロ、北川れい子先生が本気で薦めて下さる映画はやはり一味ちがいます。東京にいたって、めったにお会い出来ない方々から直接お話が伺えるしまね映画祭(塾)って、やっぱり恵まれてる。そう感じたひとときでもありましたよ。

(Sai)