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Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2016年6月号

アカデミー賞ノミニーズ

    ここ数年、アカデミー賞授賞式の生中継を観るからでしょうか、以前よりノミネート作品に対する関心度合いが高まってきている私。2月末日の授賞式から気になっていた『さざなみ』と『リリーのすべて』を、ようやく鑑賞することが出来ました。

    大好きなシャーロット・ランプリングが初めて主演女優賞にノミネートされた『さざなみ』は、まさにシャーロットのための映画。シャーロットありきで企画が進んだのではないかと想像してしまうほど、彼女だからこそ成立する世界観の作品だと感じました。さらに勝手な私の予測は続き、この作品の監督は若い。きっとオゾン作品で彼女を再認識し、いつか起用したいという野望があったはずだ !! なんて決めつけてしまったのです(笑)。

    この原稿を書くにあたり、アンドリュー・ヘイ監督をネットでチェック。1973年生まれだと分かり、この説は正しいと思い込んでおります(笑)。シャーロットが要所要所でみせる緊迫感といいますか、台詞なんていらないとばかりに体現する姿。その静かなる感情の凄まじさがスクリーンに張り詰める雄弁な空気を生み出すのでした。もはや神の領域。そう言っても過言ではないと思います。

    早くもアカデミー賞常連の風格、エディ・レッドメインが主演男優賞ノミネート、新星アリシア・ヴィキャンデルが助演女優賞初ノミネートにしてオスカーを手にした『リリーのすべて』。それは世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベと、その妻ゲルダの実話にもとづく究極のラブストーリーでした。今から約100年近く前、アール・デコ全盛の時代に性別移行に立ち向かうリリーの勇気と、夫だったはずの人が女性へと適合してゆくことを受け入れようとするゲルダの葛藤と愛情に、何度も胸が熱くなりました。

    原題は『THE DANISH GIRL』。邦題のイメージからは、リリーに焦点が当たりがちですが、同時に“ゲルダのすべて”でもある作品だと感じました。実際私はシスジェンダー(出生時に判断された性別と内面における性別の自己認識が一致していること)なので、ゲルダに感情移入することが多かったのかもしれません。共に画家だった二人の DANISH GIRL が鮮烈に放った至高の愛と芸術は、時を越えて LGBT の人たちに大きな影響を与え続けているのだと思います。

   アカデミー賞つながりで、次は『ルーム』を観る予定。カンヌ映画祭びいきだった私が変わったのか、はたまたアカデミー賞作品の傾向が変わったのか?ともかく良い映画とのご縁は私にとって理屈ぬきでの幸せです。 

(Sai)