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Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2016年5月号

〜再考・未来世紀ブラジル〜

    映画のタイトルは「未来世紀ブラジル」。舞台は20世紀の某国、国民は全てコンピューターに管理されていた。主人公サムは情報省記録局に勤務する有能な役人だが現実の社会にうんざりし、美女を救う映画のヒーロー、スーパーマンになりたいという夢想に明け暮れていた。

    ある日、職場で夢の中の美女とよく似た女性に出会ったサムは彼女を追いかけるうちに想像もしなかった現実(悪夢)に巻き込まれていく。

    事件の起こりは、一人の役人によるコンピュータの印刷ミスで反政府テロリストと善良な市民が間違って逮捕されたことだった。

    サムは事件の処理を任されるものの、国家の誤認逮捕のもみけし作業はもつれ、最後には犯罪者として囚われ“洗脳の刑”に処されてしまう。そのサムの頭脳に交錯するのは自由社会へ脱出する夢と、どこまでも明るいラテンリズムの“ブラジル”だった…。

    日本公開は1985年。監督、脚本は鬼才・テリー・ギリアム、主演はロバート・デ・ニーロ。描かれているのは個を抹殺する国家権力の恐怖とコンピューター社会への警告(印刷ミスの原因が一匹の蠅だったというブラックユーモア!)。これは21世紀に向けられた「予言の一作」ではなかったか…。夢に包まれた作品は製作者とギリアム監督の意見が合わず、監督自身の手になるオリジナル版も作られている。自身は初版を当時松江市伊勢宮町にあった第二中央劇場で鑑賞したがオリジナル版との再会は果たしてない。

   ブラジルと言えば今度のオリンピック開催国。そのブラジルが揺れに揺れているけれど映画は同国を描いたものではない。未来のどの国にも当てはめることができるのがこの作品の凄さである。和が平和社会を生むとは限らない。大衆社会の変貌、インターネットやスマホなどによる不可解な事件を耳にする度に頭の中をかすめるのが映画「未来世紀ブラジル」である。そこにある物語は31年が過ぎても終わらない…。

   某女性評論家の言葉。「世の中全体が薄っぺらな偽善に走っている」。さて、「未来世紀ニッポン」は?

(むー。)