山陰のコンサート・演劇・映画・ギャラリー・イベント情報満載!

CatchNavi

Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2016年4月号

ダイアン・キートン ―ふたつの家族の物語

    70歳で、どうしたらあんなにも可愛らしくいられるのかしら?ぜひその秘訣をおしえてもらいたいわ!!ダイアン・キートン主演の二作品を立て続けに観て、より一層彼女のことが大好きになりました。

    クリスマスイヴの一夜を描いた『クーパー家の晩餐会』と、結婚40年今後の生活を見据えて住みかえを考える夫婦の数日の物語『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』。どちらも長年連れ添った夫婦を軸にしたお話でしたが、それぞれ全く違うダイアン・キートンの存在感に、名女優の軽やかな風格を見た気持ちになりました。

    単館系の劇場で何度も客席から笑い声が起こるのって、ちょっと珍しいかと思うのですが『クーパー家の晩餐会』はコメディ要素がいっぱい。4世代11人のクーパー家の人々が集う、一見ハッピーに見えるクリスマスパーティーの夜。突然のアクシデントから各々が胸に秘めていたはずの嘘や本音が次々とこぼれ出し…といったストーリー展開です。ウディ・アレンばりの会話劇なので、聞き逃しちゃいけない台詞だらけで実に楽しい。時に生々しく、時にホロリと、個性豊かでややクセのある登場人物の面々に不思議と共感できてしまうのも面白いです。家族だから、ややこしい。家族だから、気が重い。でも家族だから、いとおしい。この感覚は世界共通なのかもしれませんね。

   住み慣れた我が家。唯一の問題は5階まで上がるエレベーターが無いこと。10才になる愛犬ドロシーも辛そうです。そこで、この部屋を売ることにしたルースとアレックス。不動産エージェントである姪っ子のリリーは早速内覧会を段取り、やる気満々。するとすぐにオファーもあり、同時に彼らは新居の交渉にも入ったのですが…。

   家の売買って、まるで不動産屋さんとジェットコースターに乗ってるみたいに目まぐるしい。こんなに大事なコト、2、3時間後に結論を出してと言われたってね。だけどリリーもきっと、自分がいかに敏腕なのかを叔母夫婦に認めてほしかったのだろうとも思ったり。人生の変化に向き合う時の優先順位のつけ方。その難しさを垣間見たのでした。

   クーパー家の人々も、ルースとアレックスも、家族に翻弄されつつも、その人間関係の中でしか得られない幸せが、本当はいつも足下にあるのだと伝えてくれました。 

(Sai)