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Mue&Saiのシネマ恋恋

 

2016年3月号

〜立春の二本立て〜

    立春の日、久しぶりに劇場に出かけ「人生の約束」と「オデッセイ」の二作を鑑賞した。

    「人生の約束」は昨今流行りのテレビスポットで知りタイトルが気になっていたもの。監督は「池中玄太80キロ」など多くの人気ドラマを輩出してきた石橋冠。演出歴55年のベテランが今という時代の中で撮りたかった映画とはどんなものなのかと興味を惹かれた。

    富山県新湊(しんみなと)を舞台にした物語は仕事一筋でIT企業の社長まで上り詰めた男が、かつての仲間であった親友の遺志を継ぎ伝統の祭りを成功させるというもの。「曳山」(ひきやま)を巡り隣町と争いを軸にした男の友情物語は、予定調和が気になるものの良き時代の日本映画を思い起こさせるものがあった。

  新湊の風景の美しさは山陰ロケの「白い船」や「渾身」などと重なった。

   主演は竹野内豊、江口洋介。しかしここに用意されていた影の主役は西田敏行、柄本明、ビートたけしのベテラン組。劇中に吐露される三者三様の人生論に石橋監督の戦後70年の思いが凝縮されていると見た。価値観の相違、地方の過疎化、老人問題が浮上するストーリーに頷きながら「人生の約束」とは昭和、平成の時代を歩んできたひとりの映像作家の遺言とも感じられた。

   「オデッセイ」は「ブレードランナー」「エイリアン」の巨匠・リドリー・スコット監督の最新作。主演にマット・デイモンというのも売りのひとつだ。

  映画はのっけから突然の砂嵐で火星にひとり残された主人公マーク(マット・デイモン)の冒険談となる。外気マイナス55度、酸素も水も殆ど無し、次の探索ミッションまで4年。他のクルーは無事ながら宇宙船からもNASA の援助の方法はなし。真っ赤な大地にひとり、全ては絶望事象。あなたならどうする?そしてマークは?

   全編が主人公のサバイバル・ゲームというのは「エイリアン」、宇宙船内や宇宙の光景はSF映画の大定番「2001年宇宙の旅」を連想させる。

   「オデッセイ」とは「長期の放浪冒険旅行」。物語はその通りだが不思議なほど興奮度は低かった。要はリドリー作品にしては新しい発見が無かったこと。おまけに主人公がマット・デイモンならすべて予定調和なのである。ハラハラドキドキよりも最後まで勝手な既視感の方が勝るという結果だった。10年後には火星移住も可能という話がある。それよりも地球の問題を解決するのが先だろう、と考えるのは自身だけ?幾万両積まれても火星などへは行きたくないというのが本音。これは「オデッセイ」が素晴らしかった証なのだろうか…。
 

(むー。)